脂肪吸引時の麻酔方法について解説【静脈麻酔と全身麻酔の違いは?】
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脂肪吸引を受ける際に必要となる麻酔は、種類によって意識の有無や痛みが異なります。
「もし手術中に目が覚めたらどうしよう……」「激痛だったらどうしよう……」
こうしたお悩みを抱えて、手術になかなか踏み出せないという方もいらっしゃるでしょう。そういった方のために、脂肪吸引で用いられる麻酔の種類と安全な脂肪吸引を行うためのポイントをお話しします。
麻酔の種類と特長
医学的な分類とは異なりますが、今回は局所麻酔、硬膜外麻酔、静脈麻酔、全身麻酔の4つの麻酔の種類についてお話します。
局所麻酔 | 硬膜外麻酔 | 静脈麻酔 | 全身麻酔 | |
---|---|---|---|---|
概要 | 注射で麻酔薬を注入し、手術する範囲のみを部分的に鎮痛する方法 | 背骨の中にある脊髄を包む膜の外側に細い管(カテーテル)を挿入し、麻酔薬を注入する方法 | 腕から麻酔薬を点滴で注入し、眠った状態にする方法(自発呼吸は保たれる) | 麻酔薬、筋弛緩薬を使い完全に体動を無くす方法。呼吸も止まるため麻酔器+人工呼吸器が必要 |
使用場面 | 手術時間が短く、小範囲の手術 | 比較的侵襲の大きな手術(帝王切開や開腹手術など) | 比較的範囲が広く、時間のかかる手術(豊胸や脂肪吸引など) | 範囲が広く、長時間、侵襲の大きな手術 |
手術中の意識 | あり | あり | なし | なし |
日帰り | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
メリット |
|
|
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デメリット |
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THE CLINIC での 使用頻度 |
脂肪吸引の手術は静脈麻酔と併せてほぼ全例使用 | 使用なし | 脂肪吸引の手術は局所麻酔(チュメセント)と併せてほぼ全例使用 | リスクや時間・手術範囲によって時々使用 |
局所麻酔 | 硬膜外麻酔 | 静脈麻酔 | 全身麻酔 | |
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概要 | 注射で麻酔薬を注入し、手術する範囲のみを部分的に鎮痛する方法 | 背骨の中にある脊髄を包む膜の外側に細い管(カテーテル)を挿入し、麻酔薬を注入する方法 | 腕から麻酔薬を点滴で注入し、眠った状態にする方法(自発呼吸は保たれる) | 麻酔薬、筋弛緩薬を使い完全に体動を無くす方法。呼吸も止まるため麻酔器+人工呼吸器が必要 |
使用場面 | 手術時間が短く、小範囲の手術 | 比較的侵襲の大きな手術(帝王切開や開腹手術など) | 比較的範囲が広く、時間のかかる手術(豊胸や脂肪吸引など) | 範囲が広く、長時間、侵襲の大きな手術 |
手術中の意識 | あり | あり | なし | なし |
日帰り | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
メリット |
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デメリット |
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THE CLINIC での 使用頻度 |
脂肪吸引の手術は静脈麻酔と併せてほぼ全例使用 | 使用なし | 脂肪吸引の手術は局所麻酔(チュメセント)と併せてほぼ全例使用 | リスクや時間・手術範囲によって時々使用 |
局所麻酔
局所麻酔は注射で痛み止めの薬液を注入する方法です。文字通り部分的に効かせる麻酔のことで、脂肪吸引(採取)を行う前に施術部位に注入する、止血剤と麻酔剤を混ぜた液体(チュメセント液)もその一種です。麻酔の中で、身体への負担は最も少ない方法ですが、手術中に意識があるため恐怖心を感じることや、注入時に痛みを訴えるケースも多いと言えます。
また、静脈麻酔などを併用しない場合、大量の局所麻酔を使うため局所麻酔中毒が起こる可能性が危惧されます。
※局所麻酔中毒とは
麻酔が血管内に多量に入ることで、中毒症状が起こることを言います。
程度によって、下記のような症状が現れます。
・軽度:めまい・饒舌・多弁・ろれつが回らない・嘔気
・中等度:意識混濁、血圧低下
・重度:呼吸停止・痙攣・深昏睡
国内では実際に、局所麻酔中毒による事故も起こっていますが[1]、麻酔の用法・用量をきちんと守って使用すれば、中毒症状は防ぐことができます。当院では、在籍する麻酔科専門医の指導のもと、徹底された安全管理を行っておりますので、ご安心ください。
硬膜外麻酔
硬膜外麻酔は、背骨の中にある脊髄を包む膜の外側に細い管(カテーテル)を挿入し、麻酔薬を注入する方法です。医学的には局所麻酔に分類されます。単独で用いる場合と静脈麻酔を併用する場合があり、以前は当院でも硬膜外麻酔を静脈麻酔に併用していました。その当時、私も当院で脂肪吸引を受けたのですが、背中にカテーテルを挿入される時は、自分の想像よりも痛みが強かった覚えがあります。
また、意識下に背中に針を刺すという行為は相当な不安を伴うものです。医療関係者でないゲストは、私なんかよりも何倍も怖い思いをされるのだと感じました。硬膜外麻酔は手術内容によっては必要不可欠ですが、強い痛みと恐怖感を感じるという懸念があります。
※現在当院では、硬膜外麻酔は使用しておりません。
静脈麻酔
静脈麻酔とは、「静脈麻酔薬」のことで、麻酔薬の種類を指す言葉です。実は局所麻酔や全身麻酔のような、麻酔の方法を指す言葉ではありません。正確に言うと、静脈麻酔薬を使用した「鎮静」になります。
静脈麻酔は、腕から麻酔薬を点滴で注入します。眠った状態のため、痛みや怖さを感じないのが特徴です。THE CLINICでは現在、ほとんどのケースで静脈麻酔を使用しています。
以前は目覚めの悪さや麻酔後の気分不良が頻繁にありましたが、今では静脈麻酔薬も進歩し、麻酔後の気分不良は軽減されています(※個人差があります)。静脈麻酔をメインに選択した理由には、痛み・怖さを感じないという特長に加えて、そういった背景もあります。
全身麻酔
全身麻酔は吸入麻酔をメインとし、一般的には気管内に挿管後、人工的に呼吸を管理して行う麻酔を指します。全身麻酔を行う場合は、術者と別に、麻酔科医による麻酔管理が必要です。意識がなくなるので、術中の怖さや痛みはありません。
当院では基本的に静脈麻酔で脂肪吸引施術を行いますが、BMI値が高い方や高齢の方、喫煙本数が多い方などは、全身麻酔を行うことがあります。術中に呼吸困難等のリスクがあるためです。こうしたリスクがある方も、挿管して麻酔科専門医による全身麻酔管理を行うことで、安全に施術を受けていただくことができます。また、長時間手術になる場合も、全身麻酔が適用となります。
安全な脂肪吸引を行うために必要な条件
インターネットでは「麻酔が途中で切れた」という体験談を見かけることもありますが、当院では手術中、持続注入器(正確な量を確実に体内に注入できる機器)を用いるので、途中で麻酔が切れたことはありません。これには脂肪吸引の機器の種類も関係するようで、従来の脂肪吸引を使用したケースでは静脈麻酔に硬膜外麻酔を併用しても、痛みで手術中に目覚めるということが実際に起こっているようです。よって、いま現在当院が静脈麻酔で問題なく脂肪吸引できている理由には、皮下組織へのダメージが最小限のベイザーリポ(ベイザー脂肪吸引)とそれを扱う技術力が考えられるのです。
また、ドクターをサポートするナースの全身管理能力の高さも、安全な手術を行う為に欠かせません。当院のナースは、ドクターから「大学病院などのオペ室ナースに引けを取らないスキル」と言わしめるレベルです。手術中の細かいゲストの異変も見逃さず、何か起こる前にドクターに指示を仰ぎ、的確な対処を行うナースたちがいるからこそ、THE CLINICのドクター陣は安心して手術に集中することができています。
麻酔管理は術後のダウンタイムにも影響
術中・術後の麻酔管理を徹底することで、ダウンタイム症状を軽減することができます。
チュメセント液の調合と注入方法に配慮
脂肪を吸引する部位やゲストの体重に合わせて、その都度チュメセント液の調合を行い、注入の際は脂肪の深い層から浅い層へまんべんなく注入しています。そうすることで、脂肪吸引時の出血やダウンタイムの腫れ、内出血を抑えることができます。
脂肪吸引後に麻酔液を絞り出す
術後、麻酔液が体に残っていると、ダウンタイムでむくみが強く出てしまいます。術後に麻酔液を傷口から絞り出すことで、術後のむくみはかなり軽減します。翌日に来院可能な方は、当日傷口を縫わずに麻酔液をさらに出し、翌日縫合を行うことも可能です。そうすることで、よりダウンタイムが楽になります。
徹底した麻酔管理で安心・安全な脂肪吸引をご提供
ここまで、脂肪吸引施術に必要不可欠な麻酔についてご紹介してきました。麻酔の扱い方によって、術中はもちろん、術後の症状も軽減することが可能です。麻酔が効きにくい、効きやすいなど、ご自身の体質で施術に不安がある、という方はぜひ一度ご相談ください。THE CLINIC では、より安全に、快適に施術を受けていただくために、お一人おひとりの体質やご要望に合わせて、麻酔の種類も含めた施術のご提案をいたします。
コラムのポイント
- 局所麻酔は負担が少ない反面、痛みや怖さを感じる可能性がある
- 静脈麻酔は、麻酔薬の改良で目覚めの悪さや吐き気などの後遺症などを解消
- 同じ麻酔法でも、手術の手技や機器によっては痛みを感じることも