「女性化乳房(男性の胸の膨らみ)外来」の効果や失敗、料金について、医師が詳しく回答

女性化乳房は、乳腺の発達が原因の真性女性化乳房と、皮下脂肪の蓄積が原因の偽性女性化乳房に分類することができます（この両方が当てはまる場合は混合型と分類します）。

真性女性化乳房と偽性女性化乳房それぞれの原因を詳しく解説していきましょう。

【真性女性化乳房の原因】
①ホルモンバランスの乱れ
テストステロンという男性ホルモンの分泌量が、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量を下回ってしまった場合、女性化乳房を引き起こす可能性があります。特に乳児期・思春期・成人期の３つのタイミングでテストステロンの減少が起こります。
●乳児期：母体のエストロゲンの影響を受けて、一時的にテストステロンの分泌量が減少します。ふくらんだ乳房組織は、生後2〜3週間で消失しますが、実は男性乳児の半数以上が乳房が肥大した状態で生まれているのです。
●思春期：ホルモン変化によって、エストロゲンが優位になることがあります。この影響で女性化乳房が引き起こされますが、6ヶ月から2年の間に自然治癒します。
●成人期：50代を超えるとテストステロンの分泌量が減少します。このタイミングで女性化乳房を発症する男性は少なくありません。50〜69歳の男性の4人に1人は女性化乳房だと言われています。

※乳児期・思春期に起こる女性化乳房はほとんどが自然治癒しますので、あまり心配なさらなくても良いでしょう。

②薬剤の服用
薬剤の中には女性化乳房を助長するものがあります。
●前立腺の疾患の治療に用いるフルタミド、フィナステリド、スピロノラクトンなどの抗アンドロゲン薬
●ジアゼパムなどの抗不安薬
●シメチジンなどの潰瘍薬
●プロペシアなどの男性型脱毛症用薬
●一部の降圧薬
●一部の抗うつ薬
●一部の抗生物質
●一部のHIV治療薬
他

③健康状態の変化
身体の健康状態はホルモンバランスに影響を与えます。結果、女性化乳房を引き起こすことがあるのです。
●老化
●腫瘍
●腎不全
●肝不全、肝硬変
●栄養失調
他

【偽性女性化乳房の原因】
皮下脂肪の蓄積が原因です。中には痩せ型で他の部位には脂肪がほとんどついていない方であっても、遺伝によって胸部に皮下脂肪が蓄積されてしまうケースがあります。

※【参考】「Enlarged breasts in men (gynecomastia)」MAYO CLINIC

乳児期、思春期に発症した女性化乳房であれば、自然治癒するケースがほとんどです。ただし、それ以外のケースでは手術して治療する必要があります。

膨らみが軽度のケースでは、薬の服用を中止すれば自然に治るでしょう。しかし、ある程度膨らみが重度のケースでは、薬の服用を中止しても、元の状態に戻らないことがあります。

一般内科で血液検査をして、ホルモン値に異常がなければ偽性女性化乳房、異常があれば真性女性化乳房の可能性が高いです。
ただし正確にはエラストグラフィーなどの乳腺用エコーを使用して診断する必要があります。

女性化乳房が薬による副作用の場合は、その薬を飲み続ける限り、再発の可能性があります。また、治療で脂肪吸引を行なった場合、脂肪組織が減ることで吸引部位は太りにくくなりますが、術後に暴飲暴食を繰り返すとリバウンドする可能性もあります。術後は食生活を整え、適度な運動などを心掛けましょう。

術後３日間はちょっとした日常動作で患部が痛みますが、回復を早めるためにも、適度な運動を推奨しています。2日目以降は仕事をするなど動いても問題ありません。ジョギング程度の軽めの運動なら１週間後には再開できます。