アクアフィリング豊胸の失敗事例【ジェル状充填剤の危険性】
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最近、健康被害についてニュースにも取り上げられたジェル状充填剤のひとつ、アクアフィリング(アクアリフト・ロスデライン)。アクアフィリングは人体にどのような影響を与えるのでしょうか? 実際に当院で除去治療を行った症例をご紹介するとともに、昨今のアクアフィリング豊胸の実態について解説します。
増加傾向にある失敗相談
ヒアルロン酸よりも組織になじみやすい上に、被膜やしこりができにくく、触感も柔らかい、といったうたい文句で登場したアクアフィリング(アクアリフト)豊胸。効果はヒアルロン酸よりも長く、3〜5年持続すると言われていました。
一見良いこと尽くしのアクアフィリング豊胸ですが、期待とは裏腹な失敗事例の報告が相次いでいます。当院でも、他院でアクアフィリング豊胸を行った後のトラブル相談が年々増加しているのが現状です。
次の動画では、当院総院長の大橋医師がアクアフィリング豊胸の危険性について、わかりやすく解説しています。まずはこちらをご覧ください。
実際にあったアクアフィリングの失敗
ザ・クリニックでは、これまでアクアフィリング豊胸の除去手術を数多く行ってきました。ここでは実際にあったアクアフィリングのトラブルと除去手術の症例をご紹介します。
ケース1:しこり
しこりができにくいと言われていたアクアフィリング豊胸ですが、実際はしこりにお悩みで相談に来られる方は少なくありません。
バストの変形としこりにお悩みで来院された方の症例です。エコーで確認すると、バストにしこりが散在している状態でした。エコーでしこりの位置を確認しながら、生理食塩水でしこりを溶解、除去を行います。
【実際の除去方法】
「生理食塩水で簡単に溶解除去できる」ことがアクアフィリングのメリットなのですが、実際に生理食塩水を用いて手術を行うと、完全に溶解できず一部は固まったままのことがほとんどです。そのような場合には、まず生理食塩水を注入し、溶け切らなかったしこりは太めの注射針で吸引しています。こちらの方も溶け切らなかった分を注射針で吸引除去しました。
ケース2:痛みと腫れ
バストの痛みと腫れのお悩み相談も増加しています。アクアフィリングによってバスト内で炎症が起こり、痛みや腫れなどの症状が出るのです。
こちらの方は左胸の痛みと腫れのご相談で来院されました。左胸が腫れ、皮膚に発赤も見られます。
【実際の除去方法】
除去手術は左胸の乳房下縁を切開し、ドレナージ術(体内に貯留した液体を体外に排出する手術のこと)でアクアフィリングを排出後、生理食塩水で洗浄を行っています。通常、アクアフィリングは無色透明ですが、除去したアクアフィリングは感染によって黄色くドロドロに濁り、膿だらけの状態でした。
ケース3:体内を移動する
当院で経験した症例ではありませんが、アクアフィリングが体内を移動したという症例も報告されています。豊胸用充填剤の一つであるヒアルロン酸の場合は、周囲に被膜が形成されることで、1ヵ所に留まってボリュームを維持します。しかし、被膜ができにくいアクアフィリングは、注入した位置に留まらず、思いがけない場所へ移動してしまうことがあるのです。皮下や乳腺内のほか、乳管に移動して母乳と一緒に出てきた、という話まであります。
■アクアフィリング豊胸を受けてご不安な方へ■
様々なトラブル症例を経験してきた医師が、バストの状態を診察いたします。お気軽にご相談ください。
アクアフィリングを始めとする充填剤注入の危険性
アクアフィリングを含むジェル状充填剤による豊胸の合併症が相次いでいるという深刻な事態を受けて、昨年、日本美容外科学会(JSAPS)は日本形成外科学会と日本美容外科学会(JSAPS)に所属する医師にアンケート調査を実施しました。その結果、回答者の半数以上が「ジェル状充填材による豊胸の合併症を診察した経験がある」と回答したのです。
この調査はアクアフィリングだけでなく、ヒアルロン酸やその他の充填剤による豊胸術も含まれています。合併症が確認されたのは全部で108症例で、その内訳は腫瘤(しこり)が44%、感染症22%、皮膚変化8%でした[1]。しこりや感染症などの合併症が多数報告されているという結果は、当院の実状とも一致します。この結果を踏まえ、同学会はジェル状充填剤の使用中止を促すガイドラインの作成を決めました[2]。
世界的に使用を自粛する方向へ
アメリカや韓国といった美容大国では、早くからアクアフィリング豊胸の危険性が指摘されてきました。
米国の厚生労働省にあたる国家機関(FDA:米国食品医薬品局)は、そもそもアクアフィリングなどの充填剤を豊胸目的で使用することを認可していません[3]。慢性炎症、腫瘍、皮膚潰瘍などの合併症が報告されているからです。また、韓国の美容外科学会も、安全面への配慮から豊胸目的のアクアフィリングの使用に反対の立場を示しています[4]。さらに、日本美容外科学会では、2019年に入り、アクアフィリングを含む非吸収性の注入剤を豊胸目的で使用することに対して自粛を求める公式な声明を近日中に発表する方針を明らかにしました[5]。
豊胸目的での使用に対し賛否が分かれていたアクアフィリングですが、現在は世界的に安全性が疑問視され、使用を反対する方向へ進んでいます。
発がん性が疑われる物質も含まれる
アクアフィリングの成分は生理食塩水以外に、アクリルアミドという化学物質が入っています。このアクリルアミドは発がん性が疑われている物質です。国際がん研究機関(IARC)は、アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質」と分類しています[6]。現在、アクアフィリング豊胸が原因でがんを発症したというデータはありませんが、発がんの可能性がある以上、アクアフィリングによる豊胸は危険と言わざるを得ません。当院では患者様の安全性を第一に考え、2017年からアクアフィリングによる豊胸を中止しました。
除去したい場合はクリニックへ相談を
ここまで、アクアフィリング豊胸による健康被害のリスクについて解説してきました。しかし、国内では公的に禁止されているわけではないため、現在もアクアフィリング豊胸を実施しているクリニックは存在します。また、2019年に製造元で名称変更があり、アクアフィリングを「ロスデライン」という別名称で扱うクリニックもあるため、注意が必要です[7]。
もし、アクアフィリング(ロスデライン)豊胸後、ここでご紹介したような症状が出たり、不安に感じることがあれば、エコー検査を行ってくれるクリニックに相談するようにしましょう。豊胸後のバストの状態をチェックするにはエコー検査が不可欠だからです。
なお、当院でもアクアフィリング豊胸後の相談に応じる専用窓口をご用意しています。診察ではエコー検査も実施しています。ご不安やお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
コラムのポイント
- アクアフィリング豊胸後、しこりなどの失敗の後悔を訴えて来院するゲストが年々増えている
- 近年、健康被害が明るみになり、アクアフィリング豊胸は世界的に自粛の方向へ
- 心配な方は、エコー検査実施可能な医療機関に相談を