プチ豊胸のメリット・デメリットを解説【ヒアルロン酸・アクアフィリング編】
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プチ豊胸は豊胸手術の中でもライトな施術で、その手軽さから人気を集めています。たしかに「胸を大きくしたいけど、大掛かりな手術は怖い」、「短期間で胸を大きくしたい」という方には最適かもしれません。
ただ、施術を決める前にひとつだけ確認しておきたいことがあります。
『プチ豊胸と聞いて、“手軽なイメージだけ”を持っていませんか?』
もしプチ豊胸をお考えなのであれば、「メリット・デメリット」の双方を知っておいた方が後悔ない選択ができると思います。
こちらのコラムでは、より多くの方に後悔のないプチ豊胸を受けていただきたいという思いから、プチ豊胸のメリット・デメリットについてまとめました。
美容外科における プチ豊胸の定義
豊胸手術には大きく分けて3種類の方法があります。シリコンバッグ豊胸のようなバッグを用いる人工乳腺法と自身の脂肪を活用した脂肪注入豊胸、そして、ヒアルロン酸豊胸の様に重鎮材を注入する豊胸術があります。今回ご紹介する、プチ豊胸は、重鎮材を利用した豊胸術のことを示し、なかでも人気なのが「ヒアルロン酸豊胸」と「アクアフィリング豊胸(アクアリフト豊胸)」の2つです。
プチ豊胸の定義は
・メスを使わない
・充填材を注入
・ダウンタイムがほとんどない
・手術時間が少ない(大掛かりな手術が必要ない)
です。
「ヒアルロン酸豊胸」のメリット
もともと人体の細胞などに存在する成分「ヒアルロン酸」をバストに注入して、ボリュームアップを図る豊胸術です。顔のプチ整形として使用されたり、化粧水にも含まれていたりするので、ほとんどの方が「ヒアルロン酸」という名前は知っているのではないでしょうか。
ヒアルロン酸豊胸のメリットは手術時間やダウンタイムにあります。
メスを使わないため所要時間は、たったの30分程度。ダウンタイムも少なく、日常生活にすぐ戻れるので、結婚式などの大切なイベント直前でも十分に間に合います。この手軽さと知名度こそが、人気の理由なのでしょう。
ヒアルロン酸豊胸のデメリット 限界とは?
プチ豊胸を代表するヒアルロン酸豊胸のメリットをご紹介しましたが、「こんなに手軽なら今すぐ受けたい!」そんな風に思った方もいらっしゃるのではありませんか?
たしかに、ここまで手軽ならお試し感覚で受けても良いかな、なんて気持ちにもなりますよね。
ただ、冒頭でもお話しした通り、どんな豊胸手術もメリットばかりではありません。以下のデメリットも知った上で、ご決断いただければと思います。
数カ月後には「小さくなった」と感じるように
注入するヒアルロン酸の種類にもよりますが、ヒアルロン酸豊胸の持続期間は、半年〜2年程度と時限的です。「意外に持続する」と思うかもしれませんが、これはあくまでも全てのヒアルロン酸がなくなる期間を指しています。膨らんだ風船がだんだん小さくなって(体内吸収されて)いくイメージが近しいでしょう。
費用まで「プチ」とはいかない
ヒアルロン酸豊胸の費用は、注入するヒアルロン酸の量によって変わります。ヒアルロン酸の費用相場は1ccあたり3,000〜5,000円といったところ。とても安く感じますが、1カップアップするためには片胸100ccのヒアルロン酸を注入しなければなりません。そうなると、単純に計算しても両胸600,000〜1,000,000円もの費用がかかってしまいます。手軽そうに見えても、費用面では決して「プチ」ではないのです。
性質上「触感が硬くなる」ことが避けられない
ヒアルロン酸=柔らかいとイメージされていませんか? 実は柔らかいのは顔用に用いるヒアルロン酸であって、豊胸に用いるヒアルロン酸は性質上粒子が粗く、触感が硬くなりがちです。これは持続期間を伸ばす目的で選択されており、吸収されにくいのが特徴です。つまり、効果を持続させたい場合は硬くなりがちな粒子の粗いヒアルロン酸を選択するほかありません。逆に触感を柔らかくしたい場合は効果が持続しませんので、まさに二者択一です。
ちなみに、ヒアルロン酸豊胸後、マッサージをすれば柔らかくなるという考えもあるようですが、THE CLINIC のとしての考えはズバリ「おすすめしない」です。胸に注入されたヒアルロン酸が皮下に流れてしまったり、しこりになったりする可能性があるからです。むしろ、ヒアルロン酸と皮膚の距離が近くなり、尚のこと硬くなってしまうことも考えられます。
ヒアルロン酸豊胸での失敗リスク
続いて、ヒアルロン酸豊胸の失敗リスクをご説明しましょう。
ここでは、THE CLINIC の豊胸ヒアルロン酸除去外来に来院したゲスト様に起こっていた実際の写真も併せてご紹介します。衝撃的かもしれませんが、これが失敗の実態です。
失敗リスク①しこりができる
バストに注入されたヒアルロン酸の周りには、被膜が形成されます。これは体がヒアルロン酸を異物と捉えて形成される自己組織の膜のこと。本来であれば、ヒアルロン酸はこの被膜とともに体内に吸収(分解)されるのですが、大きな塊で注入した時や、片胸200cc以上を注入した時、さらに体の拒絶反応が出やすい体質の場合などに、被膜が必要以上に厚くなることがあります。こうして厚くなった被膜は分解しきれず、しこりとして残ってしまうのです。
では、ヒアルロン酸豊胸後のしこりを除去するにはどうしたらよいのでしょうか。
ヒアルロン酸のしこりは、エコーを見ながらヒアルニダーゼを使って溶解除去していきます。注射針で除去できるので、バストに大きな傷跡が残るということはありません。
失敗リスク②しこりが瘢痕化する
ヒアルロン酸のしこりが炎症を起こすと、瘢痕化(被膜が繊維化)することがあります。体質や繰り返し注入が原因です。こうなると、しこりの除去手術は困難を極めます。
では、ヒアルロン酸豊胸後に瘢痕化したしこりを除去するにはどうしたらよいのでしょうか。
瘢痕化したしこりは、触感の改善や通常のしこり除去と同じような治療法では解決できません。右の方の場合、乳輪を切開してしこりを摘出しました。THE CLINIC では傷跡が極力残らないように乳輪を切開しますが、そもそもヒアルロン酸豊胸のメリットは傷跡が残らないこと。しこりが悪化すれば、結局は傷を作らなければならなくなってしまうのです…。
【安全のため】失敗を回避するポイント
ヒアルロン酸豊胸の失敗を回避するポイントを4つあげました。体質の関係でしこりができやすい人もいるので一概には言えませんが、ご参考までにお示しします。
失敗回避ポイント①注入量は多くても片胸200cc程度まで
注入量には適した量があります。大きくしたいからといった理由で大量にヒアルロン酸を注入することは、極めて危険でしこりや炎症の元になります。
通常、ヒアルロン酸は乳腺下や大胸筋下に注入します。ところが大量に注入すると、胸がぱんぱんに膨らんで、本来注入しないはずの乳腺組織や皮下組織などに移動してしまうことも。そうなるとバスト内で炎症が起き、除去が必要になってしまいます。
失敗回避ポイント②何度も注入しない
ヒアルロン酸が吸収された後に手術を何度も繰り返すのも実は危険で、おすすめできません。何度も注入すると炎症が起こりやすく、その結果、被膜が厚く、硬くなってしまうのです。つまり、しこりが瘢痕化しやすいということ。
1度目のヒアルロン酸豊胸のしこりが残っている状態で、その中にヒアルロン酸を注入してしまい、悪化させてしまうケースも考えられます。
失敗回避ポイント③柔らかいヒアルロン酸を選ぶ
ヒアルロン酸の性質上、ある程度仕上がりが硬くなることは避けられません。せめてもの対策として、柔らかめのヒアルロン酸を選ぶこともひとつです。
ただ、ヒアルロン酸豊胸で「触感の柔らかさ」を売りにしているにも関わらず、値段が明らかに安い場合は要注意。水(生理食塩水)で薄めたヒアルロン酸を提供している可能性があります。
失敗回避ポイント④技術力が高いドクターを選ぶ
間違った層への注入は炎症の要因に、また、大き過ぎる塊での注入はしこりの要因になります。これらはヒアルロン酸の性質ではなく、ドクターの注入技術に依存する失敗。どの豊胸手術でも言えることですが、ドクターの技術力は成否を分ける重要なポイントです。見極めるためには、症例数などの事前調査を行っておきましょう。
「アクアフィリング豊胸」のメリット
数年前、ヒアルロン酸豊胸のデメリットを克服したプチ豊胸として登場したのが、アクアフィリング豊胸(アクアリフト豊胸)です。注入材の98%が水分でできているため、ヒアルロン酸よりも組織に馴染みやすく、しこりができにくい性質があります。また、注入後の触感も柔らかいといった触れ込みでした。
なお、1ccあたりの費用もヒアルロン酸と比較すると若干お高めではありますが、効果の持続期間は3〜5年とヒアルロン酸よりも持続するので、コストパフォーマンスが良いと言えるかもしれません。
アクアフィリング豊胸の費用対効果 | |
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費用相場 | 1ccあたり¥4,400〜¥6,600程度 |
1カップUPに必要な量 | 70cc〜100cc |
持続期間 | 3〜5年 |
【注意喚起】アクアフィリング豊胸に対する、世界各国の動き
ヒアルロン酸豊胸よりも持ちが良くて柔らかいなら、アクアフィリング豊胸を選びたくなってしまいますが、実はまだ安全性が確立されていません。アクアフィリングの原料である「アクリルアミド」という成分は、“ヒトに対しておそらく発がん性がある物質”とさえ言われています[1][2]。
各国の美容外科学会も、相次いでアクアフィリングに対する否定的な見解を示しています。韓国美容・乳房再建医学会は「アクリルアミドと、以前胸に変形を起こしたアクアミドは同じ成分の可能性が高い」と発表。この考えに基づき、同学会は「豊胸目的のアクアフィリング使用は安全性に関する証拠が立証されるまで反対する」との立場を示しました。それを受け、日本美容外科学会(JSAS)も「アクアフィリングならびにアクアリフトを用いた豊胸術を推奨することはできない」という主旨の声明を発表しました。
(公表文はこちら▷ポリアクリルアミド・フィラー使用についての注意(日本美容外科学会))
美容大国のアメリカでは、そもそも豊胸を目的とした人工的な充填材(ヒアルロン酸を含む)の使用自体が認められていません[3]。
【追記】2018年11月、日本美容外科学会の調査によって「ジェル状充填材を使った豊胸術による健康被害」が明らかになりました[4]。しこりや感染症などの合併症が多数報告。こうした結果を踏まえ、学会はジェル状充填剤の使用を中止するよう促すガイドラインを作成する方針です。
【危険】メリットを疑いたくなる失敗例
アクアフィリングは生理食塩水で容易に溶かすことができ、体外に排出できると言われています。しかし、当院のアクアフィリング除去外来では、そんな謳い文句を疑いたくなるような失敗例が多数見受けられます。その一部をご紹介しましょう。
失敗例①炎症
組織に馴染みやすい(=柔らかい)と言われるアクアフィリングですが、逆にそれが仇となった失敗例もあります。皮膚直下に大量のアクアフィリングが溜まり、炎症を起こしていたケースです。その方のバストは、まるで胸に内出血ができたように、青紫色に変色していました。
なぜ皮膚直下に大量のアクアフィリングが溜まっていたのかというと、注入されたアクアフィリングが皮下直下に移動した可能性が高いです。どんなに上手なドクターが乳腺下に注入しても、柔らかくて被膜を作りにくいアクアフィリングは、触れられただけで皮下や乳腺内、さらには乳管にまで移動することがあります。
では、アクアフィリング豊胸後の炎症を抑えるにはどうしたらよいのでしょうか。
この方の場合、脇の注入部から管を入れてアクアフィリングを除去しました。通常のアクアフィリングは透明ですが、黄色くなっているのがお分かりいただけるでしょうか。アクアフィリングが炎症を起こし、軽度感染して膿と一緒に流出してきたためです。
失敗例②しこり
アクアフィリング豊胸からわずか1カ月、硬さや安全面の不安から来院された方がいらっしゃったのですが、バストには小さなしこりが散在していました。柔らかいと言われるアクアフィリング豊胸でも、こうしたしこりの相談が後を絶ちません。
では、アクアフィリング豊胸後のしこりを除去するにはどうしたらよいのでしょうか。
アクアフィリング豊胸のしこりは、エコーを用いながらしこりの位置を確認し、生理食塩水を使って溶かしながら除去するのが基本ですが、実際には溶け切らないことも少なくありません。そのような場合は、生理食塩水によってアクアフィリングが柔らかくなったところを、太めの注射針を使ってなんとか取り出します。
その他のプチ豊胸 光豊胸のメリット・デメリット
光豊胸とは、光エネルギーを胸に照射することで、固まっていたリンパ液を液状化し、脂肪細胞間に隙間をつくり、脂肪細胞を大きくすることでバストアップを促す方法です。
光を照射するという施術内容からもお分かりかと思いますが、光豊胸は、一般的に美容外科手術ではなく、エステサロンで行われていることがほとんど。
また、光を照射するだけなので、痛みはもちろん、ダウンタイムもなく負担が少ない豊胸術です。しかし、その一方で大きなバストアップ効果を実感できないという声も少なくありません。とくに瘦せ型で、脂肪があまりついていない人には効果が見込めないことが多いようです。
メリット
・メスや麻酔を使わないため、痛みやダウンタイムは全くない
・光を照射するだけなので施術時間が短い
デメリット
・個人差が激しく、大きな効果を実感できない場合がある
・維持するためには定期的に受ける必要がある
後悔しないためには、デメリットや失敗リスクにも目を向ける
私たちは、手軽さだけを理由にプチ豊胸(ヒアルロン酸・アクアフィリング)を受けたものの、その後の仕上がりに後悔し、やむを得なく除去を選択された方々の治療に数多く携わってきました。
その経験から申し上げたいのは、「どうかデメリットも知った上で決断していただきたい」ということです。
プチ豊胸には良い面もたくさんありますが、そこだけにとらわれず、ぜひ施術後のことなども含め冷静に判断してみてください。そのためのお手伝いなら、私たちは労を惜しみません。
コラムのポイント
- プチ豊胸の手軽さの裏には、術後に発症するリスクが複数存在する
- ヒアルロン酸豊胸はともかく、アクアフィリング豊胸は安全性が確立されていない
- 手軽さだけでなく、デメリットや失敗リスクにも納得した上の選択を
よくある質問
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ヒアルロン酸豊胸後の仕上がりが思いのほか硬かったのですが、なぜでしょうか。
豊胸に用いるヒアルロン酸は性質上粒子が粗いため、バストが硬い触感になります。
粒子の粗いヒアルロン酸は、持続期間を伸ばす目的で選択されており、吸収されにくいのが特徴です。
ヒアルロン酸に対して柔らかいとイメージされるかと思いますが、これは顔用に用いるヒアルロン酸です。ただ、ヒアルロン酸豊胸で効果を長持ちさせたければ、粒子が大きく硬いヒアルロン酸を選択するほかありません。 -
ヒアルロン酸豊胸のメリット・デメリットは何ですか。
施術時間が短く、ダウンタイムが少ないことがメリットです。一方で、効果が時限的なことや繰り返し注入することがデメリットになります。
ヒアルロン酸豊胸はメスを使わないため、施術の所要時間がおおよそ30分程度です。そのうえ、ダウンタイムも少なく、日常生活にすぐ戻れる手軽さがメリットです。しかし、持続期間は半年〜2年程度と効果が時限的で、徐々に体内に吸収されていきます。そのため、バストが膨らんだ状態を維持するためには繰り返し注入する必要があり、思った以上に出費が嵩むケースがほとんどです。
また、繰り返し注入することでしこり化する(ひどくすると瘢痕化する)リスクも避けられません。